90年代に自身が作詞作曲プロデュースした楽曲がオリコンランキングの上位5位を独占するなど、日本の音楽業界にムーブメントを起こしてきたが、2008年に詐欺容疑で逮捕された小室哲哉さんによる著書。
avexの松浦社長に「小室さんがいなかったら今のavexは無かった」と言われる程の天才が、何故これほどまでに落ちたのか。その経緯が赤裸々に語られます。
小室さんによると、歌手になれる人というのは、声の質で決まるそうです。つまり、歌が上手いか下手かというのはそれほど関係ありません。そしてその歌手になれるなれない人の基準は、プロデビューできるかどうかではなく、”人に伝わる歌が歌えるか”ということです。それほど、厳しい基準でシンガーを選んできたから、あれほどのヒット曲を飛ばせたというわけです。
松浦社長も、オーディションの基準は「もう一度聞きたいと思える声か」と、Twitterでおっしゃってました。
さらに小室さんによるとカラオケでヒットする曲というのは”わかりやすい”だけでは駄目ということです。小室さんが考えるカラオケでヒットする曲の3要素は、「発散」「社交」「エクササイズ」だそうです。詳しくは小室哲哉が語るカラオケでヒットする曲の法則をご覧ください。
小室さんがプロデューサとしての先見性を発揮していることを感じるのが”スピード感”に関する考察だと思います。例えば、一昔前までは、パソコンで1つのウェブページを開くのにも数秒かかりました。その時代にパソコンを使っていた人たちはそれを待つことができましたが、現代の人達は待てません。それが、現代の人たちが感じているスピード感なのです。
小室さんはインターネットが普及することをいち早く嗅ぎつけていたため、1996年に自身のウェブサイトで、音楽配信の実験をしていました。もちろん時代の先を行き過ぎていたため普及はしませんでしたが、今や音楽のネット配信のいうのは当たり前となっていますね。このような先見性が彼の強みだと思います。音楽配信日本での動向Wikipedia。ちなみに、2001年には自身が所属するglobeから"Internet"を裏に返したと思われる"outernet"というアルバムも出しています。
そうやって時代を先取りしていた小室さんにも、音楽のわかりやすさばかりを追求して、J-POPの進化を止めていた時代がありました。それこそ、”スピード感”の話に直結しており、わかりやすくて、一瞬で覚えられるような曲ばかりを量産している時期があったと語っています。
事件の真相や奥さんであるKEIKOさんについても赤裸々にかかれているところが面白かった。音楽プロデューサーとしての世の中に対する、鋭い分析や、独自の音楽観には一線を越えたものがあります。小室さんの考え方や音楽論が手に取るようにわかる一冊。
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