2014年2月3日月曜日

「偉大な芸術家は盗む」の真意

スティーブジョブズは、ゼロックスPARKという研究所を訪れGUIという技術を盗みました。というのは、当時のコンピュータのほとんどは、キャラクターベースと言われるもので、キーボードから文字を打ち込むと、真っ黒な画面に緑色でその文字が表示される形だったんです。つまり、テキスト情報しか画面に表示できず一部のマニアにしか使えない商品だったわけです。しかし、GUIシステムでは、グラフィクスで表示するので、誰にでも使えると思ったわけです。


アップルのゼロックスPARK見学は、往々にして業界史上最大級の強盗事件だと言われています。ジョブズ自身、この見方を誇らしげに肯定しています。
「つまり、人類がなし遂げてきた最高のものに触れ、それを自分の課題に取り込むということです。ピカソも、『優れた芸術家はまねる、偉大な芸術家は盗む』と言っています。我々は、偉大なアイディアを貪欲に盗んできました」
もうひとつの見方は、アップルによる強盗よりも、ゼロックス側の不手際とするものです。ジョブズはこちらも肯定しています。
「ゼロックスはコピー機しか頭になく、コンピュータとはどういうものなのか、なにができるのかがわかっていなかった。だから、コンピュータ業界最大の勝利を目前に大敗を喫したんだ。いま、彼らがコンピュータ業界の頂点に立っていてもおかしくなかったんだけどね」
どちらの見方にも一面の真実があるが、すべてを言い尽くしているわけではありません。T・S・エリオットが指摘しているように、着想と創造のあいだには闇がある。新しいアイデアだけでイノベーションが生まれるわけではない。そのアイデアを現実とする行為も等しく重要なのです。

ジョブズらは、ゼロックスPARCで見たGUIというアイデアを大きく改善したし、ゼロックスでは不可能であっただろうさまざまな形で現実のものとしました。

”真似る”と”盗む”は違う。”真似る”はそっくりそのまま”真似る”。”盗む”は盗んだものに対して付加価値を加える。それが「偉大な芸術家は盗む」の真意だと思います。

スティーブ・ジョブズⅠ【書評・レビュー】

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